イベント概要
2025年1月10日~12日、東京ビッグサイトにて開催された「東京コーヒーエキスポ2025」に参加しました。今年で10回目を迎えるこの展示会は、アジア最大規模のコーヒー専門展として、国内外から500社以上が出展し、3日間で延べ5万人が来場する一大イベントです。
開催情報
- 会場: 東京ビッグサイト 西展示棟
- 会期: 2025年1月10日(金)~12日(日)
- 出展社数: 520社(国内380社、海外140社)
- 来場者数: 約52,000人
- 主催: 日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)
2025年の主要トレンド
1. サステナビリティの進化
今年の展示会で最も強調されたテーマは「持続可能性」でした。
カーボンニュートラル焙煎
- 電気焙煎機の普及: 複数のメーカーが次世代電気焙煎機を展示
- 再生可能エネルギー: 太陽光発電と連携した焙煎システム
- 熱回収技術: 焙煎熱を再利用する革新的なシステム
サステナブルパッケージング
- 生分解性素材: 従来のプラスチック包装に代わる新素材
- リサイクル可能デザイン: 分解・リサイクルしやすいパッケージ設計
- カーボンフットプリント表示: 製品ごとのCO2排出量を明示
2. テクノロジー×コーヒー
デジタル技術とコーヒーの融合が加速しています。
AIによる品質管理
- 画像認識技術: 生豆の欠点検出を自動化
- 焙煎プロファイル最適化: AIが最適な焙煎カーブを提案
- 味覚分析システム: センサーによる客観的な風味評価
IoT対応機器
- スマート抽出機器: スマートフォンで遠隔操作可能
- データ分析: 抽出データの記録と分析
- 在庫管理システム: 豆の鮮度管理を自動化
3. ダイレクトトレード2.0
生産者との関係性がさらに深化しています。
ブロックチェーン活用
- トレーサビリティ: 農園から消費者までの完全な追跡
- フェアトレード証明: 透明性の高い取引記録
- 品質保証: 各段階での品質データの記録
産地パートナーシップ
- 長期契約: 生産者との複数年契約が主流に
- 技術支援: 栽培・精製技術の共同開発
- コミュニティ支援: 産地の教育・インフラ投資
注目の出展社とプロダクト
国内企業
A社 - 次世代電気焙煎機「ZERO Carbon」
- 特徴: CO2排出量95%削減
- 技術: 蓄熱セラミック+熱回収システム
- 価格: 従来機比で初期投資1.5倍、ランニングコスト60%減
B社 - AI品質管理システム
- 機能: 生豆選別の完全自動化
- 精度: 人間の熟練検査員と同等以上
- 効率: 処理速度10倍向上
海外企業
C社(イタリア)- プレミアムエスプレッソマシン
- 革新: 抽出プロファイルの細かいカスタマイズ
- IoT: クラウド連携でレシピ管理
- デザイン: ミラノデザインアワード受賞
D社(アメリカ)- サステナブルパッケージ
- 素材: 植物由来100%のバイオプラスチック
- 機能: 従来のアルミ袋と同等の保存性
- 認証: 各種環境認証取得済み
セミナー&ワークショップ
注目セミナー
「気候変動とコーヒー生産の未来」
講師: 東京大学 農学部 教授
要点:
- 2050年までにアラビカ栽培適地が50%減少の予測
- 耐候性品種の開発と栽培技術の革新が必須
- 消費者の意識変革の重要性
「Z世代のコーヒー消費トレンド」
講師: 市場調査会社アナリスト
要点:
- SNS映えと倫理的消費の両立を求める
- サブスクリプションモデルの受容性が高い
- 体験価値を重視(オンライン購入でも産地情報を求める)
ハンズオンワークショップ
カッピングセッション
- 産地: エチオピア、コロンビア、インドネシア比較
- テーマ: 精製方法による風味の違い
- 参加者: 60名(満員御礼)
ラテアート競技会
- 参加者: プロバリスタ40名
- 優勝: 京都のカフェオーナー
- 技術: 3Dラテアート、複雑な模様の組み合わせ
ビジネス交流とネットワーキング
商談成果
新規取引先
- 焙煎機メーカー: 次世代機器の導入検討
- パッケージサプライヤー: サステナブル素材への切り替え
- 輸入商社: 新産地コーヒーの独占契約交渉
パートナーシップ
- 産地農協: コロンビアの協同組合と直接契約に向けた協議
- カフェチェーン: 自社焙煎豆の供給契約
- 教育機関: バリスタ育成プログラムの共同開発
ネットワーキングイベント
初日夜:ウェルカムレセプション
- 参加: 業界関係者300名
- 内容: カジュアルな交流会、名刺交換
- 成果: 10社以上と具体的なフォローアップを約束
二日目夜:業界懇親会
- 参加: 出展社、バイヤー、メディア200名
- 内容: 各社プレゼンテーション、フリートーク
- 成果: 新規プロジェクト提案3件
消費者トレンドの発見
エシカル消費の定着
来場者の約70%が「サステナビリティを購入基準に含める」と回答。
重視するポイント
- フェアトレード認証: 52%
- オーガニック栽培: 48%
- カーボンニュートラル: 35%
- 生分解性パッケージ: 41%
プレミアム志向の強まり
- 高価格帯商品への関心: 前年比30%増
- シングルオリジン人気: エチオピア、ゲイシャ品種が人気
- 少量高品質: 大容量よりも鮮度重視の傾向
体験価値の重視
- ストーリー性: 生産者の顔が見える商品
- 限定性: 季節限定、数量限定への反応が良い
- 教育コンテンツ: 淹れ方動画、産地情報への高い関心
NO TRACE EXPLORATIONの展示
ブースコンセプト
テーマ: 「日中架け橋 - 文化と技術の融合」
展示内容
- 自社焙煎豆: 北京直火焙煎の特徴を紹介
- 文化展示: 日本と中国のコーヒー文化の違いと融合
- 試飲コーナー: 3種類のシングルオリジンを提供
来場者の反応
ポジティブフィードバック
- 「直火焙煎の深い味わいが印象的」(50代男性、カフェオーナー)
- 「日中の文化融合というコンセプトが新鮮」(30代女性、バイヤー)
- 「産地との関係性の深さに共感」(40代男性、輸入商社)
具体的な成果
- 名刺交換: 約150枚
- 商談アポイント: 20件
- サンプル提供: 80社
- メディア取材: 3社
今後のビジネス展開
短期施策(3ヶ月以内)
-
新規取引先とのフォローアップ
- 商談のスケジューリング
- サンプル提供と評価
- 契約条件の詰め
-
サステナブルパッケージの導入
- 生分解性素材への切り替え検討
- コスト分析と実証実験
- 顧客への価値訴求方法の検討
-
テクノロジー導入の検討
- AI品質管理システムの実地テスト
- IoT焙煎機の導入可能性調査
- ROI分析
中期施策(6ヶ月~1年)
-
ダイレクトトレードの拡大
- コロンビア農協との契約締結
- 新産地の開拓(ケニア、パナマ)
- 生産者訪問と関係構築
-
デジタルマーケティング強化
- ECサイトのリニューアル
- SNSコンテンツの充実
- サブスクリプションサービスの開始
-
教育事業の立ち上げ
- バリスタ育成講座の開講
- オンライン学習コンテンツの制作
- 産地ツアーの企画
長期ビジョン(1年~3年)
-
ブランド確立
- 日中架け橋ブランドとしての認知度向上
- プレミアムラインの投入
- 国際市場への展開
-
サステナビリティのリーダーシップ
- カーボンニュートラル達成
- 業界標準の策定への貢献
- 環境認証の取得
-
技術革新への投資
- 自社研究開発部門の設立
- 大学・研究機関との共同研究
- 特許技術の開発
まとめと所感
展示会の総括
2025年東京コーヒーエキスポは、業界の未来を形作る重要なトレンドを明確に示しました:
-
サステナビリティは必須条件
- もはや差別化要因ではなく、業界の標準に
- 消費者の意識が確実に変化している
-
テクノロジーが品質と効率を両立
- 職人技とテクノロジーは対立するものではない
- データ活用が新しい価値を生む
-
関係性がビジネスの核心
- 生産者、パートナー、消費者との長期的な関係構築
- ストーリーと透明性が信頼を生む
NO TRACE EXPLORATIONの立ち位置
私たちの「日中架け橋」というコンセプトは、この業界トレンドと完全に一致しています:
- 文化融合: 異なる市場の強みを統合
- 技術革新: 伝統的な技術とモダンなアプローチの融合
- 持続可能性: 両国での長期的なビジネス関係
次なるステップ
この展示会で得た知見とネットワークを活かし、さらなる成長を目指します:
- 即座の行動: フォローアップ商談の実施
- 戦略的投資: サステナビリティとテクノロジーへの投資
- 長期的視点: ブランド価値の構築と業界への貢献
参加者の声
来場者インタビュー
Aさん(カフェオーナー、東京)
「サステナビリティへの取り組みがどの出展社も真剣で、業界全体の意識の高さを感じました。NO TRACEさんのブースでは、日中の文化融合という独自の視点が印象的でした」
Bさん(バイヤー、大阪)
「テクノロジーの進化に驚きました。AIによる品質管理システムは、小規模焙煎所でも導入可能な価格帯になってきていて、業界全体の底上げに期待できます」
Cさん(輸入商社、神奈川)
「ダイレクトトレードの重要性を再認識しました。ブロックチェーンを活用したトレーサビリティは、消費者への信頼構築に不可欠だと感じます」
資料・リンク
公式情報
参考記事
- 「コーヒー業界の気候変動対策」- 日経ビジネス
- 「Z世代とコーヒー消費」- 週刊ダイヤモンド
- 「AIとコーヒー品質管理」- 日経クロステック
関連リンク
次回展示会予定
- 大阪コーヒーフェスティバル: 2025年5月
- 札幌スペシャルティコーヒー展: 2025年9月
引き続き、業界の最新情報をお届けしてまいります。
著者プロフィール NO TRACE EXPLORATION 代表。北京と東京を拠点に、日中両国でのコーヒービジネスに15年従事。スペシャルティコーヒーの品質向上と両国の文化交流に情熱を注いでいます。